時間ですよ~
髪の毛の異変に気付いたのは大学生のときだった。
季節はちょっと肌寒い秋。
バスに乗っていて、
学校の帰りに後頭部が窓のサンにぶつかった。
コツン。
金属がじかに肌に当たる嫌な感じ。
(まさか!)と思い
錯覚ではないかと後頭部を窓枠ぶつけてみる。
冷たい。
え?もう来たの。早いじゃない。
オヤジはハゲ。母方の祖父もつるっぱげ。
いつかは来ると冗談めかして言っていたが、
20代前半にきちゃうのか…。
「お客さんもう時間だよ」
「え、もう?」
「はやく出てっとくれ」
「ちょっと待ってよ、殺生な」
「もう営業時間は終わりなんだよ」
「延びないの?」
「あとは自分で叩いてみてくれ」
「もちろんやったサ」
「たたいたんだね」
「そりゃー、血が出るくらいにね」
「でもダメだったんだね」
「ホントにどうにかならないかな」
「可哀想だけど、どうにもならないんだよ。それが仕事なんだから」
遺伝子との会話でした。
秋になればイチョウの葉っぱが落ちてくる。
自然の摂理にはかなわない。
冬風に舞い散る枯葉の中に、成す術もなくたたずむ僕がいた。
【今日の教訓】
ハゲはある日突然、無遠慮にズカズカと。